力をひきだす
学びの道の絵画制作クラスでは、他の講座同様、技術を教えるだけでなく、子どもが本来持っている力を引き出すことに重点を置きます。
経験があり、思いがあり、世界の再構成があり、そこにそれを表現できる程度の技術が伴うと良い作品ができるのであって、技術があっても思いのない作品はつまらないものです。
子どもならではの、自由な発想を豊かに発展させ、表現させることは、私どもの得意とするところです。
自己表現の喜び
子どもの内発的な描きたい気持ちや、自己表現の喜びを大切にすると、子どもたちの絵や作品はとても生きいきとしたものになります。
逆にこう描かなければいけないと教えられた子どもは、描く気を失い、自己表現しようとしなくなってパターン化した絵しか描かなくなります。自由な発想もブロックされ、相手にどう思われるかを気にしてアイデアを出せなくなってしまったりします。
しかし、一旦そういう状態になった子も、、自分の世界を自由に表現することを肯定され、表現の喜びを知ることで、絵画や自由制作はもちろん指示制作も生き生きと自発的に取り組むことができるようになります
大切な自己肯定感
どの子も、ちょっとした表現技術を得て、自分なりに工夫し、自分で満足できるものを表現することができると、自分の世界観に自信を持つことができるようになります。そうすると、不思議なくらい学習や生活面でも自信を持つようになります。その自己肯定感は、他者との交流に積極的に飛び込んでいける力となり、生きる力を生み出します。その力は、子どもの未来を生き生きと輝くものに変えていくはずです。
絵画制作クラスでの成長モデル
ある一人の女の子の絵画の成長を6段階に分けて想定したものです。この子の得意なことは物作りで、くじらについて詳しく知っています。
課題:あなたは森の奥に幻の動物がいると聞いて、冒険に行きました。幻の動物とはどんな生き物なのでしょう。その幻の動物と出会ったらやりたいことを描いてみましょう。(画用紙にクレヨン、30分制作)
レベル1
頭に浮かんだイメージを手の動きに任せて描き起こしている段階。まだ表現の幅が狭く、課題対応力も未熟なため、課題とは関係のない要素(ハートや星マーク)が登場してくる。
講師からの質問:幻の動物とはどんな動物で、どんなことをやっている場面ですか。
女の子の回答 :わからない。
レベル2
体を全身描けるようになり、自分と他者という関係も表現し始める。アイデアはまだ稚拙なため、幻の動物という課題でも、熊など平凡なアイデア。外というだけで雲や太陽など固定概念で描いてしまい、全体的に平面的である。
講師からの質問:幻の動物とはどんな動物で、どんなことをやっている場面ですか。
女の子の回答 :くまと遊んでいるところ。
レベル3
自分と他者の交流が表現できるようになる。人体は、腕をあげる・横向きになるなど幅が 増え始める。幻の動物は「話せる熊」と、想像力も少し発達した。背景に関しても、地面が絵の中で立ち上がり、画面の中での奥行きを意識し始める。色ぬりも丁寧になってはいるが、色や形にまだ世界観は出せていない。
講師からの質問:幻の動物とはどんな動物で、どんなことをやっている場面ですか。
女の子の回答 :人の言葉が話せるくまと手遊びしているところ。
レベル4
人体の関節や指など、より構造を意識をし始め、動きが豊かになってくる。幻の動物のアイデアも、好きなくじらに寄せたりと自分の世界観を少しずつ課題に応用できるようになってくる。周りの背景や人体の身につけているものなどは、より豊かにするための要素が増え、楽しい画面になってきた。
講師からの質問:幻の動物とはどんな動物で、どんなことをやっている場面ですか。
女の子の回答 :陸に住んでいるくじらと手遊びをしているところ。
レベル5
アイデアが全体を通して自分の特技や好きなことに寄せることができるようになる。またその内容も、相手に対しての思いやりが見られる。色塗り・森の要素・人の身につけているものなど、すべての要素に「それらしさ」が出るための工夫が凝らされている。どこを見ても発見のある絵になった。
講師からの質問:幻の動物とはどんな動物で、どんなことをやっている場面ですか。
女の子の回答 :陸に住んでいるくじらは海くじらと違って仲間がいなくて寂しいかもしれないから、葉っぱや木のみでくじらの友達を作ってプレゼントしているところ。
レベル6
アイデアはもちろんのこと、画面全体に世界観があらわれ、絵から「描きたい!」という気持ちが伝わるような塗り込み、描き込みがされている。構図に関しても、課題である森の奥ということにより焦点を当てた配置になっており、人体やくじらや森、全てが上手に描けるための工夫だけでなく、自分なりのこだわりが施されている。
講師からの質問:幻の動物とはどんな動物で、どんなことをやっている場面ですか。
女の子の回答 :陸に住んでいるくじらは海くじらと違って仲間がいなくて寂しいかもしれないから、葉っぱや木のみでくじらの友達を作ってプレゼントしているところ。このくじらは陸に住んでるから体も葉っぱ柄になっていて、森の奥のキラキラ光っている木に囲まれて暮らしているんだ。